去年の同じ頃、サシバの雛たちは巣立ました。ただし、揃ってではありません。3羽いた雛は成長の度合いがちょっとずつ違いました。
雛の孵る時間差がどれくらいあるのか分かりませんが、おそらくは一番最初に生まれたであろう雛の成長が一番早いようです。ただ、何日も差があるのかと言えばそうでもないようです。
成長の差は摂取する餌の量の違いだと思います。先に生まれた方がやや成長が早く体力的に優位になるようです。そうすると力関係から言って他を押しのけて親から与えられる餌を啄む・・・でも最終的に巣立ちの時間差を考えると思ったほど一番子の優先性は無いように思います。これは餌が豊富な状態ならと但し書きが着くような気がします。イヌワシのような事例もありますから一概には言えないのでしょう。
つまり巣立ちも多少時間差はあるようなのです。
さて、6時45分くらい到着。巡回コースを回ります。
巡回の途中ですが・・・
いい感じで構えています。飛び出す気配満々ですね。
直ぐに飛び出しました。メスの成鳥のようですが、餌を見つけたのでしょう。
電柱からの飛び出しは明らかに初速が違うように思います。そりゃそうです。なんせ飛び出し台はコンクリートみたいなもんですからね。この飛び出しの安定が狩りの安定に繋がるのかなとも思いました。木に止まっていると風がなければいいですが、そうでないと結構揺れますからね。管理人たちが見た巣は大きな木の高さ7分どころくらいに架かっているものが多かったですが、雛の最初の難関はこの木からの巣立ちでしょう。
ともかく飛び出す時は枝先に移動しなければ外の世界が見えません。親のように巣に直接出入りできる飛翔能力は巣立ちの頃には無いように見えます。
さて、先週と同じエリアで雛たちの巣立ちを待つことにしました。
追記:
管理人たちの巡回コースは大雑把に5つのエリアを回るようになっています。これはサシバの縄張りと思われるエリアを5つつなげて回ると言うことです。最初はもっと広く回っていたのですが、出現の頻度とか巣の位置の把握だとかしているうちに今の5つのエリアに定着していきました。ただし、そのうち3つは古巣になっています。後釜が来て別場所に営巣しているらしいエリアや後釜が居なくなってしまったエリアもあります。取りあえず巣のあった場所は繁殖に好適な条件が揃っているようなので今はいなくても巡回は続けてみようかと思っています。
暫く観察を続けていると頻繁に親の姿を見ます。声も聞こえます。雛はまだ巣にいるようです。
そして・・・
3羽の飛翔を確認。おそらく一番子が巣立って親と一緒に飛んでいるものと思われます。うーん。良かった(笑
親が頻繁に啼いて雛たちを呼んでいるようです。巣には餌を咥えて入ることはありません。間違いなく巣立ちを促しています。
一番子の姿を遠くにしか確認出来ませんが、うまくいけば次は二番子の巣立ちです。親の啼きようから言ってかなり近い感じがします。
ここは一か八か、巣のある森の少し離れた大きな木を日陰兼ブラインドとしてレンズを構えてみました。もし出てくる位置が違えば徒労に終わるかもしれませんが日中の陽は強く気温もかなり高いです。日陰で無いと干上がってしまいそうです。
まつこと暫し。
するするっとサシバの雛らしきモノが杉の木を登っています。
黒い虹彩からしてサシバの雛です。いやもう若と言った方がいいかもしれません。危なげなくなんてことはなく、落ちても死んでしまうことはないかもしれませんが見ていてハラハラします。
なんか足を踏み外して本当に落ちそうなシーンも一度や二度ではありません。
追記:
巣の位置は把握していました。しかしだからと言って巣の直近付近から出てくるとは限りません。それは去年の観察で分かったのですが雛は巣立ち前に枝渡りをして巣のまわりを移動します。巣には戻ると言うよりは近くに留まると言った感じで、巣立つ(飛び出す)場所はかなり巣から遠かったのです。先にも書きましたが巣から直接飛び出るのは雛は無理なようで良い条件の場所に移動して巣立ちをするような感じです。
雛の動きが分かるような見通しの良い所ならその動きでなんとか見当が付きますが、今回は賭けでした。
しかしようやく頂上に辿り着くと・・・
あまり逡巡もせずにいきなり飛び出しました。おお、巣立ち、初飛びじゃぁ・・・
なんて感動するもほんの一瞬のこと。数メートル先の隣の木の枝先に着陸です。
厳密に考えればこれは巣立ちではないのかと思案を巡らしていると、当該の若もなにやら逡巡模様。
しかしこの逡巡は割と短かったです。ほんと10秒あるか無いかの間。
いい面構えです。まさに飛び際、そしてこれがサシバの若にとって生き際となる瞬間なんでしょう。ここで飛ばなければ先はないのです。後戻りは出来ません。
初夏の青空めがけてサシバの若が巣立ちました。
雛から若へ。今飛び立った若はこれから自分がどんなことに遭遇するかは全く知りません。数千キロも往復して戻ってくる・・・戻って来て欲しいと願っている・・・なんてことは今は知る由もありません。そしてこれから待ち受ける色々な事を思うと管理人なぞはなんの役にも立ちませんが何かしら胸にこみ上げて来るものがあります。
さて、一番子の飛翔は確認、二番子もなんとか巣立ち。
そして残る最後の三番子の声が巣のある森の中から聞こえてきます。
・・・続く