飛び際が生き際? サシバが里山にやって来た・・・Part10

先ほど飛び立った若が巣の付近を飛び回ります。

飛んでいる姿はぱっと見、親と区別が付きません。飛び方がそれほど違うということは無いようです。

親の鳴き声に鳴き声で応えているようです。

親は頻繁に飛び回ります。飛んでついてこいみたいな感じなんでしょうか。

夕方までに三番子が飛び出すか待っていたのですがどうも今日は無理なようです。三番子の巣立ちを期待して宿へ。

翌日は朝5時30分位から待機しました。この時期は夜明けが早いですからすでに十分な明るさ(と暑さ)になっています。

オスの親はすでに飛び回っていました。大分羽が痛んでいるようです。それともこれから換羽するのでこんなもんなんでしょうか。

巣のある森の中から三番子らしき声が聞こえてきます。巣の位置からは大分離れた場所に移動している感じです。出てくる場所が予想出来ません。ことによると地上から目で見える場所ではないかもしれません。

暫く観察していたのですが、声ばかりで姿が見えません。

一旦宿に朝食を摂りに帰ります。

朝食後、戻ってくると昨日飛び立った若かどうかは分かりませんが若が木に止まっていました。

かなり距離があるところで場所も高いので近寄ることは出来ませんが、若であることは確認出来ます。

親は昨日に続き精力的に飛び回っています。

視線を横に向けて何かを見ています。

するとオスメス番で飛翔し始めました。

空を飛んでいるモノですから1つのフレームにこれだけの大きさで入るというのはあまりあることではないと思います。子供たちに対するデモンストレーションなんでしょうか。

そう言えば、森から声が聞こえません。

昨日若が止まっていた木を見てみると・・・

若が2羽止まっていました。

ことによると三番子が巣立ったのかもしれません。

そう思っている内に、空にサシバ達が飛び出しました。

撮影はさておき、何羽飛んでいるかの確認です。

「左に3羽、右に2羽、合計5羽飛んでいる」

管理人たちは取りあえず5羽の飛翔を確認することが出来ました。個体の識別は無理ですが、まあ、状況からすると目出度く3羽の雛が巣立ったとみて良いと思います。

管理人たちが朝食を摂っている間に三番子が飛び立った・・・そんなこともあるのでしょう。

それにしても親の飛翔は随分と接近して飛んでいました。

サシバはワタリの時なども群れて飛びますがこんなに近くに寄って飛ぶことは無いように思います。この時期ならではのことなんでしょうか。

それと口を大きくあけて啼きながら飛ぶこともこの時期は多いようです。いつでしたか霧の伊良湖岬で霧の中にサシバの声が頻繁に聞こえたことがありますが、集団で移動することの多いサシバにはこのような行動がよく見られるのかもしれません。

朝は結構慌ただしかったですが、サシバ一家の無事な姿を今年も見ることが出来たようです。

他のエリアのサシバ達も気になります。

別エリアの大分くたびれた感じのメス。羽が結構痛んでいる感じです。

しかしこの時期は休んではいられません。餌に狙いを定めて身をかがめて・・・

いい飛びだしでした。

この時期はこのような光景によく出くわします。

追記:
この個体を見たときお腹の模様の感じから若ではないかと思いました。今年孵った雛ではないかもしれませんがかなり若い個体かもしれません。生育段階毎の外見の変化の様子は興味深いものがあります。

巣の位置を特定して継続して観察するとなると管理人たちは週末しか時間が取れないので複数の場所の観察は難しいのですが、それでもある程度巡回している感触からすると年々歳々個体が減ってきているように感じます。

なんとか今年ここで生まれた若たちができるだけ多く戻って来て空いているエリアを埋めて欲しいものだと思いながら、撤収と相成りました。

飛び際が生き際? サシバが里山にやって来た・・・Part9

去年の同じ頃、サシバの雛たちは巣立ました。ただし、揃ってではありません。3羽いた雛は成長の度合いがちょっとずつ違いました。

雛の孵る時間差がどれくらいあるのか分かりませんが、おそらくは一番最初に生まれたであろう雛の成長が一番早いようです。ただ、何日も差があるのかと言えばそうでもないようです。

成長の差は摂取する餌の量の違いだと思います。先に生まれた方がやや成長が早く体力的に優位になるようです。そうすると力関係から言って他を押しのけて親から与えられる餌を啄む・・・でも最終的に巣立ちの時間差を考えると思ったほど一番子の優先性は無いように思います。これは餌が豊富な状態ならと但し書きが着くような気がします。イヌワシのような事例もありますから一概には言えないのでしょう。

つまり巣立ちも多少時間差はあるようなのです。

さて、6時45分くらい到着。巡回コースを回ります。

巡回の途中ですが・・・

いい感じで構えています。飛び出す気配満々ですね。

直ぐに飛び出しました。メスの成鳥のようですが、餌を見つけたのでしょう。

電柱からの飛び出しは明らかに初速が違うように思います。そりゃそうです。なんせ飛び出し台はコンクリートみたいなもんですからね。この飛び出しの安定が狩りの安定に繋がるのかなとも思いました。木に止まっていると風がなければいいですが、そうでないと結構揺れますからね。管理人たちが見た巣は大きな木の高さ7分どころくらいに架かっているものが多かったですが、雛の最初の難関はこの木からの巣立ちでしょう。

ともかく飛び出す時は枝先に移動しなければ外の世界が見えません。親のように巣に直接出入りできる飛翔能力は巣立ちの頃には無いように見えます。

さて、先週と同じエリアで雛たちの巣立ちを待つことにしました。

追記:
管理人たちの巡回コースは大雑把に5つのエリアを回るようになっています。これはサシバの縄張りと思われるエリアを5つつなげて回ると言うことです。最初はもっと広く回っていたのですが、出現の頻度とか巣の位置の把握だとかしているうちに今の5つのエリアに定着していきました。ただし、そのうち3つは古巣になっています。後釜が来て別場所に営巣しているらしいエリアや後釜が居なくなってしまったエリアもあります。取りあえず巣のあった場所は繁殖に好適な条件が揃っているようなので今はいなくても巡回は続けてみようかと思っています。

暫く観察を続けていると頻繁に親の姿を見ます。声も聞こえます。雛はまだ巣にいるようです。

そして・・・

3羽の飛翔を確認。おそらく一番子が巣立って親と一緒に飛んでいるものと思われます。うーん。良かった(笑

親が頻繁に啼いて雛たちを呼んでいるようです。巣には餌を咥えて入ることはありません。間違いなく巣立ちを促しています。

一番子の姿を遠くにしか確認出来ませんが、うまくいけば次は二番子の巣立ちです。親の啼きようから言ってかなり近い感じがします。

ここは一か八か、巣のある森の少し離れた大きな木を日陰兼ブラインドとしてレンズを構えてみました。もし出てくる位置が違えば徒労に終わるかもしれませんが日中の陽は強く気温もかなり高いです。日陰で無いと干上がってしまいそうです。

まつこと暫し。

するするっとサシバの雛らしきモノが杉の木を登っています。

黒い虹彩からしてサシバの雛です。いやもう若と言った方がいいかもしれません。危なげなくなんてことはなく、落ちても死んでしまうことはないかもしれませんが見ていてハラハラします。

なんか足を踏み外して本当に落ちそうなシーンも一度や二度ではありません。

追記:
巣の位置は把握していました。しかしだからと言って巣の直近付近から出てくるとは限りません。それは去年の観察で分かったのですが雛は巣立ち前に枝渡りをして巣のまわりを移動します。巣には戻ると言うよりは近くに留まると言った感じで、巣立つ(飛び出す)場所はかなり巣から遠かったのです。先にも書きましたが巣から直接飛び出るのは雛は無理なようで良い条件の場所に移動して巣立ちをするような感じです。
雛の動きが分かるような見通しの良い所ならその動きでなんとか見当が付きますが、今回は賭けでした。

しかしようやく頂上に辿り着くと・・・

あまり逡巡もせずにいきなり飛び出しました。おお、巣立ち、初飛びじゃぁ・・・

なんて感動するもほんの一瞬のこと。数メートル先の隣の木の枝先に着陸です。

厳密に考えればこれは巣立ちではないのかと思案を巡らしていると、当該の若もなにやら逡巡模様。

しかしこの逡巡は割と短かったです。ほんと10秒あるか無いかの間。

いい面構えです。まさに飛び際、そしてこれがサシバの若にとって生き際となる瞬間なんでしょう。ここで飛ばなければ先はないのです。後戻りは出来ません。

初夏の青空めがけてサシバの若が巣立ちました。

雛から若へ。今飛び立った若はこれから自分がどんなことに遭遇するかは全く知りません。数千キロも往復して戻ってくる・・・戻って来て欲しいと願っている・・・なんてことは今は知る由もありません。そしてこれから待ち受ける色々な事を思うと管理人なぞはなんの役にも立ちませんが何かしら胸にこみ上げて来るものがあります。

さて、一番子の飛翔は確認、二番子もなんとか巣立ち。

そして残る最後の三番子の声が巣のある森の中から聞こえてきます。

・・・続く

サシバが里山にやって来た・・・Part8

先週はサシバの雛が孵っているであろう里山でサシバ達の餌獲りが見られました。

今週は天候があまり良くないようなので逡巡したのですがやはりこの時期ならではと思い、状況によっては泊まりもアリとの準備もして出張ることにしました。

到着は6時40分くらい。いつものコースを一回り。

うーん、電柱サシバを1羽だけ確認。それも古巣のエリア付近なので近くに営巣している気配はない模様。

長年の勘と経験と言うほどの蓄積はないですが、それでもこんな時はあまり状況が芳しくないとの予感が。

稲穂はかなり伸びてきました。田んぼでの餌取りは難しくなって来ているのは確かです。

ただ、この時期雛は巣立っていないと思いますので、餌はやはりカエルや蛇と言ったものが中心だと思います。森の中のセミ類はまだこの時期では餌の対象にはなっていないはずです。

だったら、この動きの無さは何なんだ・・・と言うことになるのですが、これが分かれば苦労はしない(笑

ツバメは巣立ちをしていました。ツバメは生育も早いので2回戦目という巣もあります。

サシバは抱卵と孵ってからの育成でおよそ10週間くらいかかるようです。ですから2回戦はまず無理です。

それに加えて秋には数千キロを渡って行くわけですからそのために必要な成長も時間がそれなりにかかります。

そうそう、なんでこんなにサシバを追いかけるのか、気になるのか、ちょっと冷静になって考えてみました。

オオタカやハヤブサなども今頃は営巣している訳ですが、それらは留鳥です。一年中見ることが出来ます。

思えばタカにハマっていったのは秋のワタリからでした。タカが渡るなんて鳥に興味がなければ一生知らなかったかもしれません。

秋の綺麗な青空にサシバ達の群れ、黄金色に透けて見える美しい羽、いかつい形相のハチクマ、等々普段では見ることの出来ないタカたちの姿に興味を引かれたのでした。

考えてみれば不思議なことでなんでそんなリスクを冒してまで数千キロを渡るのか。そんなことを考えながら秋のワタリを見ていたら、タカたちはどう日本で過ごしているのか、自然と興味が湧いて来たのです。

ハチクマの営巣は関東では中々見ることが出来ないと思いますが、サシバなら関東エリアでも見ることが出来ます。そんなことがあって北関東サシバ詣が始まりました。

今年で4シーズン目になります。

雛の育成を直接確認出来たのは3シーズン目の昨年でした。巣自体は古巣を含めると4つ確認出来ました。今回は巣の目視による確認は出来ませんでしたが、位置の特定は出来ました。

こうしてサシバと付き合っていると時間を忘れてしまうこともしばしば。

ただし、今日のようにまるで姿が見えないと時間がながいですね(苦笑

あまり動きがないのでここのところ1番親を確認しているエリアで構えていたら、多少は動きがありました。声もします。

まあ、こうなると写真はおいといて動きの観察ですね。

巣から離れて視界を広く取ってみていると・・・雛の巣立ちが近い時期ですからもっと頻繁に餌獲りがあってもいいと思うのですが、やはり動きが少ない。

巣に戻る後ろ姿ですが、取りあえずこれだけ写真に収めました。見ると餌を咥えていません。

うーん、これは案外巣立ちが近いのかもしれないとの予感が。巣立ちを促すために直近になるとあまり餌を与えないこともあるようですから、そうなのかもしれません。

ただ、それがいつなのかは誰にも分かりません(笑

天気もあまり良くない。動きも少ない。今日は諦めて来週出直そうと言うことになりました。

来週は雛の巣立ちが確認出来るかどうかです。

そんなこんなで昼に撤収と相成りました。

追記:
撤収後すぐににわか雨に遭遇。まあ、良いタイミングで撤収しました。

サシバが里山にやって来た・・・Part 7

長野やら新潟への遠征が続き北関東のサシバのやって来る里山にご無沙汰していました。

抱卵期はあまり動きがありません。ですが今頃なら雛が孵っているので親鳥の餌撮りが活発化して暇をもて余すことはないだろうと思い梅雨の合間を縫って久しぶりの出張りです。

この時期は日が長いですが天候が不順です。雨が酷いと観察になりませんのでその辺りが厄介ではあります。

思えば野鳥の繁殖時期に重なる6月は観光シーズンではありません。ですから移動も楽ですし混雑も少ない。バーダーにとっては天候さえなんとかしのげればいい季節です。

4時出立。6時40分到着。取りあえずいつものコースを回ってみます。

稲穂は大分伸びてきました。緑の薄い絨毯くらいの感じです。

巡回中、4個体ほど車中から発見。まあまあの動きです。前回来た時に比べると動いている感じです。

途中みつけた電柱サシバ。この時期は餌場の範囲が広がるので普段見かけない場所でも見かけることがあります。思い切り電柱に近づいて撮ってみました。逆光ですが表情は分かります。

電柱から枝止まりしたサシバ。オスですね。餌は咥えていないし、狙っている気配もありません。巣は近くではない感じがします。

別場所の別個体。これもオスです。これは狩りをしようかという気配があります。少し待機していると・・・

少し目を離している間に餌を獲って巣に戻ったようです。管理人達が見ている場所からは巣の位置は分かりませんでした。

しばらく待っていると戻ってきて更に狩りを始めたようです。今度は枝ではなく畦で餌を狙っています。

餌を見つけたようです・・・が今度は捕獲に失敗した模様。

餌を持たずに森の中へ。巣があるのかとここでもしばらく待機しましたが・・・どうも違うようです。

この辺りはよく電柱サシバを見かけるところで巣が近いと思われます。

少し時間があるので撮影はともかく観察に徹してみました。

しばらくするとサシバの鳴き声が聞こえてきました。メスがオスを呼んでいるようです。

何度かオスが現れ、口に餌を咥えて森の中に入り直ぐに出てくるところを観察。どうやら巣の場所は特定出来たようですが、人が地上から確認出来る場所ではないようです。しかも巣の形態もいままで管理人達が見てきたモノとは違う感じです。雛は確認出来ません。

それでも雛が孵っていることは間違いないと思います。人目に触れないような場所なら人の接近によって巣を放棄することも無いでしょうから、その点は安心です。しかし巣の出入りによってはかなり羽を痛めるのではないかと思いその点は少し心配もあります。ここの場所は若達の姿を確認したこともあるので大丈夫だとは思いますが。

少し気がかりなこともあります。昨年雛を観察した巣が架かっていた木は虫にやられてしまいました。前回来た時には個体を確認したのですが今回は確認出来ていません。出現頻度の高い場所なので雛が孵っていれば少し待てば確認出来るかと思ったのですが・・・

タイミングの問題もありますからたまたまかもしれないですが、ちょっと心配です。

さて、こうなるとサシバの動きから目が離せません。今シーズンは狩りのシーンを見てみたいし撮ってみたいと思っています。これは非常に難しいです。

抱卵中は親鳥が必要な餌だけでいいので比較的同じ場所で狩りが行われます。餌撮りの頻度はそれほど高くありません。つまり観察や撮影の機会も少ないのです。

この時期は雛の分の餌獲りもあるので餌撮りの頻度は高くなります。先にも書きましたが普段見ない場所でも見るということは普段狩りをしない場所でも狩りをするからです。

つまり餌撮りの頻度は高くなるが範囲も広くなる。

やはりそれでもこの時期の方がチャンスは多いでしょう。餌撮りのシーンの観察と撮影は場所の選定も一工夫必要になりますが運も必要です。

追記:
巣の位置の把握は観察や撮影にはプラスになる場合もあると思います。

誤解して欲しくないのは巣の位置を承知したからと言って巣の直近、直下で侍っても鳥にもいいことはありませんが、観察者や撮影者にとってもいいことはありません。

何故なら鳥の移動するパターン、動線と言い換えてもいいですが、それが見えなくなるからです。巣はまさにホームポジションなのでそこからどう動くか、そこにどうやって帰ってくるか、なのでそれなりに距離をおかなければ動線は見えません。

鳥に近づきたいなら鳥のストレスにならずに近づく方法を模索する・・・管理人は路傍の石作戦と呼んでいますが・・・のも鳥見、鳥撮りの楽しみのひとつだと思っています。

さて、帰りの駄賃ではありませんが、珍しく蒸気機関車の重連が走るとのこと。

観光シーズンではないですがお客は一杯乗っていました。また撮影に来ている人達もかなりの数でした。

日曜日なので明日の仕事のこともあり重連を撮影して撤収と相成りました。

管理人越後路を行く・・・松之山 Part5

察するにクマタカがサシバのエリアに侵入・・・それを追いかけてモビングしている。

そんな動きのような気がします。

名前はクマタカでも気性は大人しい・・・訳がないと思うのでが、タカ対タカと言うことになると他の動物に対する攻撃性と違うのか同じなのか。もっともタカですから互いに狩りを捕食の中心に置いている訳で攻撃性が低いということはないでしょう。捕食に関しては攻撃性の高さは当然としてそれ以外と言うことになるとどうなのか・・・興味深いところですね。

ネットで検索するとワシタカの類で1番攻撃性の高く獰猛とされているのがアフリカに分布するカンムリクマタカだとか。日本分布するクマタカより一回り大きいようですが、カエルや蛇、時には昆虫などを補食しているサシバに比べたらクマタカは肉食系でより獰猛なはずだと思いますが。

サシバが倍近い大きさのクマタカに果敢にモビングをしかけていきます。見ているこちらがハラハラしてしまいます。もし反撃をされたらおそらく一撃で決着がついてしまうのではないかと思うくらい体躯の大きさ頑強さの違いが目に明らかだからです。

と思っていたら、今度はクマタカが逆にサシバに向かって行きました。

さすがにクマタカも鬱陶しくなったのでしょうか。ただ、その反撃は少し緩い感じもします。相手を追い払えば良いと言った感じに見えます。

なるほどそう言うことかと思いました。例えるならクマタカは大型の重爆撃機。サシバはそれより小さい戦闘機。空中戦なら小さい体躯が不利になるより機動性の高さが有利になるのだと。捕食の対象になる動物に対してはクマタカの方が遙かに破壊力(捕獲力)は高いでしょうけど、タカ同士で空中戦となるとこれは体躯や力の差より飛翔能力の高い方が有利になるのは当然です。

そのうちにサシバが二機(?)になりました。二機で波状攻撃開始です。

いやぁ、これは飽きないです。サシバとクマタカの空中戦です。追いつ追われつ、どちらも決定的な打撃を相手に加えないのか、加えられないのかそれは定かではありませんが、地上の動物同士の争いとはひと味違う空中戦はなかなか見応えがあります。

これは動画でも獲りたかったですね。本物の戦闘機同士の空中戦が日本の空で起こるようなことはあって欲しくないですが、このタカ同士の空中戦なら何回でも遭遇してみたいですね。

勢い余ってこちらに近づいてこないかと待っていたのですがそれは無かったですね。まあ、これで人が近くにいたらこんなことにはならないのかもしれません。

途中、視界から外れた時間もありましたが延々と1時間以上はやり合っていました。最後はどちらも何処と無く姿が見えなくなってしまいましたが、どうやら引き分けのようでした。見た目で考えるとサシバとクマタカが引き分けなんて納得がいかないような気がしますが、やりはそこは空中戦の妙なのかもしれませんね。

そんな訳でこの空中戦を見られただけでも今回松之山に来た甲斐がありました。次来た時見られる保証がないだけに得がたい経験だったように思います。

その後は空中戦の行われたであろうと思われる場所を回ってみました。松之山にあってかなり開けた高台で広い棚田がありました。これは確かに絶好の餌場でしょう。クマタカのような大型猛禽も狩りが出来るし、当然サシバにとっては格好の繁殖場所です。どうもこの辺りにサシバの巣はありそうですがさすがに調べる時間はありませんでした。そしてもしかしたらクマタカの巣も近いかもしれません。ここら辺りでじっくりと観察を続けていれば更に興味深い生態が分かるかもしれませんね。

さて、明けて日曜日。本日は横浜に帰りますが朝方昨日の場所を一回りしました。

松之山でおそらく1番見通しがいい場所のようですが、ことによると秋のワタリもいけるかもしれませんね。

営巣しているサシバやハチクマもそれなりの数は居るだろうし、営巣が多いと言うことは餌が豊富な証です。さらにワタってくる個体が多いと言うことは気象的な条件も整っているようにも思います。上昇気流が発生しないとワタリの通過点にはなりにくいし、営巣している個体が多いからと言ってワタリのルートと必ずしもクロスしている保証はないのですが、今シーズンは山本山ではなくてこちらで2日間くらいはワタリの観察をしてみたいなと思います。

豊富な自然と美しい棚田。適度に人間の手が入った自然はむき出しの自然より人や動物に優しいと言うことは北関東の観察の経験からなんとなく分かってきたような気がしていました。そして更にここはもう少し自然の割合が高い場所のようです。ですから更に生き物たちの生存に資しているようです。

3週続けての遠征はさすがに少し疲れました。走った距離もかなりになります。来週は天気もあまり芳しくないようなので少し骨休めをしようかな、などと考えながら松之山を後にしました。名残惜しいの山々ですが、笹団子をお土産に買って、撤収と相成りました。